予防接種に関した病気の説明




ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ

(1)ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオの病気の説明

ジフテリア
ジフテリア菌の飛沫感染によって起こります。1981年にワクチンが導入された事により患者の発生は年間に1〜2人程度です。ジフテリアは感染しても症状が出るのは10%程度で、残りの人は症状が出ずに保菌者となります。しかし、他の人に感染させる事もあります。感染は主にのどですが、鼻にも感染し、高熱、のどの痛み、犬吠様の咳、嘔吐などです。小児の場合、のどの腫れによって呼吸ができなくなり窒息死する事もあります。また発病2〜3週間後に菌の出す毒素により心筋の障害や神経麻痺を起こす事があります。日本国内では現在、大規模な流行はみられなくなりましたが海外では流行している国もあります。

百日咳(P)
百日咳菌の飛沫感染により起こります。1956年から百日咳ワクチンの接種がはじまって以来、患者数は減少してきています。当時は菌体の入ったワクチンでしたが、1981年 以降は副反応の少ない精製ワクチンを使っています。百日咳は普通のカゼのよう な症状ではじまります。続いて咳がひどくなり、顔を真っ赤にして連続性に咳込むようになります。咳のあと急に息を吸い込むので、笛を吹くような音が出ま す。熱は出ません。乳幼児は咳で呼吸ができず、くちびるが青くなったり(チアノーゼ)けいれんを起こす事があります。肺炎や脳症などの重い合併症を起こす事もあります。乳児では命を落とす事もあります。1970年代後半に予防接種率が低下した際、百日咳患者が多数出て、113名の死者を出しました。このようなことを繰り返さないためにもぜひ予防接種を受けましょう。

破傷風
破傷風菌はヒトからヒトヘ感染す るのではなく、土の中にひそんでいて傷口からヒトヘ感染します。傷口から菌が入り体の中で増えますと、菌の出す毒素のために、口が開かなくなったり、けい れんを起こしたり、死亡することもあります。患者の半数は自分や周りの人では気がつかない程度の軽い刺し傷が原因です。日本中どこでも土中に菌はいますの で、感染する機会は常にあります。またお母さんが抵抗力(免疫)をもっていれば出産した時、新生児の破傷風も防げますので、ぜひ予防接種を受けておきましょう。

ポリオ
「小児マヒ」と呼ばれ、わが国でも1960年 代前半までは流行を繰り返していましたが、予防接種の効果で現在は国内での自 然感染は報告されていません。しかし、現在でもインド、アフリカ、中東、中国などではポリオの流行がありますから、これらの地域で日本人がポリオに感染したり、日本に ポリオウイルスが入ってくる可能性がある訳ですから、免疫をつけておきましょう。ポリオウイルスはヒトからヒトヘ感染 します。感染したヒトの便中に排泄されたウイルスが口から入りのど又は腸に感染します。感染したウイルスは3〜35日(平均7〜14日)腸の中で増えます。しかし、ほとんどの場合は、症状が出ず、一生抵抗力(免疫)が得られます。症状が出る脊髄麻痺の場合、ウイルスが血液を介して脳・脊髄へ感染し、麻痺を起こします。ポリオウイルスに感染すると100人中5〜10人が、カゼ様の嘔吐症状を呈し、発熱し、続いて頭痛、激しい嘔吐があらわれ麻痺を起こします。一部の人には、その麻痺が永久に残ります。呼吸困難により死亡する事もあります。感染の合併症として麻痺の発生率は1000〜2000人に1人ですが、麻痺患者が1人発生したときには、その周りに100人以上の感染者がいるといわれています。

(2)DPT-IPV(ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ)四種混合ワクチン(不活化ワクチン)
ジフテリア菌、百日咳菌、破傷風菌、ポリオウイルスを殺し(不活化)、それぞれ精製して混合したものです。1期として初回接種3回(3〜8週間間隔で)、追加接種は1回(初回接種3回終了後1年〜1年半までに)受けるようにしましょう。また、2期として11、12歳時(通常6年生)にDT(ジフテリア・破傷風)二種混合ワクチンで追加接種を1回 します。回数が多いので、接種もれに注意しましょう。確実な免疫をつくるには、決められたとおりに受けることが大切ですが、万一間隔があいてしまった場合 でも、その接種状況によりはじめからやり直しでは無く続けてできる事がありますので、かかりつけの医師に相談しましょう。

(3)DPT-IPVワクチンの副反応
1981年に百日咳ワクチンが改良されて以来、日本のワクチンは副反応の少ない安全なワクチンになっています。現在の副反応は注射部位発赤(あかみ)、腫脹(はれ)、硬結(しこり)などの局所反応が主で、頻度に程度の差はありますが、初回接種1回目のあと、7日目までに14.O%、追加接種後7日目まで41.5%です。なお、硬結(しこり)は少しずつ小さくなりますが、数ヵ月残ることがあります。特に過敏な子で肘をこえて上腕全体がはれる場合が少数ありますが、これも湿布などで軽快します。通常高熱は出ませんが、接種後24時間以内に37.5℃以上になった子が1.4%あります。重い副反応はなくても、機嫌が悪くなったり、はれが目立つときなどは医師に連絡してご相談ください。


MRワクチン(麻しん・風しん)

(1)麻しん(はしか)・風しんの病気の説明

麻しん(はしか)
麻しんウイルスの空気感染によって起こる病気です。感染力が強くワクチンを受けないと、必ずかかる重い病気です。発熱、せき、鼻汁、めやに、発疹を主症状とします。最初3〜4日間は38℃前後の熱で、一時おさまりかけたかと思うとまた39〜40℃の高熱と発疹が出てきます。高熱は3〜4日で解熱し、次第に発疹も消失します。しばらく色素沈着が残ります。主な合併症としては、気管支炎、肺炎、中耳炎、脳炎があります。麻しん(はしか)にかかった人100人中、中耳炎は7〜9人、肺炎は1〜6人に合併します。脳炎は1000人に2人の割合で発生がみられます。また、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)という慢性に経過する脳炎は約5万人に1人発生します。また、麻しん(はしか)にかかった人は1000人に1人の割合で死亡します。わが国では現在でも年間約50人の子がはしかで命を落としています。予防接種率の高い国では麻しんの流行がみられていません。日本は麻しん(はしか)の予防接種率が低く、先進国の中で飛び抜けて高い発生率になっています。そのため麻しん(はしか)の輸出国と呼ばれています。ぜひ予防接種を受けましょう。

風しん
風しんウイルスの飛沫感染によって起こる病気です。潜伏期間は2〜3週間です。軽いカゼ症状ではじまり、発疹、発熱、後頸部リンパ節腫脹などが主症状です。そのほか眼球結膜の充血もみられます。発疹も熱も約3日間でなおりますので「三日ばしか」とも呼ばれることがあります。合併症として、関節痛、血小板減少性紫斑病、脳炎などが報告されています。血小板減少性紫斑病は患者3000人に1人、脳炎は患者6000人に1人くらいです。大人になってからかかると重症になります。妊婦が妊娠早期にかかりますと、先天性風しん症候群と呼ばれる病気をもった児(心臓病、白内障、聴力障害など)が生まれる可能性が高くなりますから、風しんワクチンを受けていない人は、妊娠前に予防接種を受けておくことが大切です。

(2)MRワクチン[麻しん(はしか)・風しん](弱毒生ワクチン)
麻しんウイルスを弱毒化して培養した液と風しんウイルスを弱毒化して培養した液を混合してつくったワクチンです。
平成18年度より2回接種が始まりました。まず、第1期として12〜24ヶ月の子どもに、続いて、第2期として5歳以上7歳未満で小学校就学前1年間子どもに接種を行います。2歳を過ぎてしまうと5歳になるまで助成は受けられません。1歳になったらすぐに受けるように努めましょう。集団生活に入るまでには、他の人にうつさないためにも必ず受けておきましょう。ガンマグロブリンの注射を受けたことがある人は、3ヵ月以上過ぎてから、川崎病などでガンマグロブリン大量療法を受けたことがある人は6ヵ月以上過ぎてから麻しんの予防接種を受けてください(ガンマグロブリンは、血液製剤の一種でA型肝炎等の感染症の予防目的や重症の感染症の治療目的などで注射することがあります)。

(3)ワクチンの副反応
このワクチンは生ワクチンですからウイルスが体内で増えるため、1期では17.9%に発熱、4.3%に麻しん様の発疹、2期では6.8%に発熱、1.3%に麻しん様の発疹が認められることがあります。その他の副反応としては、注射部位が赤くなったり、硬結(しこり)の局所反応が見られます。これらの症状は通常は1〜3日で消失しますが硬結(しこり)は少しずつ小さくなりますが、数ヵ月残ることがあります。またまれに熱性けいれんが起こります。
 

日本脳炎

(1)日本脳炎の病気の説明
日本脳炎ウイルスの感染で起こります。ヒトから直接ではなく、ブタの体内で増えたウイルスが蚊によって媒介されうつります。7〜10日の潜伏期間の後、高熱、頭痛、嘔吐、意識障害、けいれんなどの症状を示す急性脳炎をお越す事があります。流行は西日本地域が中心ですが、ウイルスは北海道など一部を除く日本全体に分布しています。この地域で飼育されているブタの流行は毎年6月からはじまり10月まで続きますが、この間に80%以上のブタが感染しています。以前は小児、学童に発生していましたが、予防接種の普及などで減少し、最近では予防接種を受けていない高齢者を中心に発生しています。感染者のうち1000〜5000人に1人が脳炎を発症します。脳炎のほか髄膜炎や夏かぜ様の症状で終わる人もあります。脳炎にかかった時の死亡率は約15%ですが、神経の後遺症を残す人が約50%あります。ぜひ予防接種を受けておきましょう。

(2)日本脳炎ワクチン(不活化ワクチン)
日本脳炎ウイルスを殺し(不活化)、精製したものです。北海道を除く日本全国には日本脳炎ウイルスに感染したブタとウイルスを運ぷ蚊(コガタアカイエカ)がたくさんいます。乳幼児での流行は抑えられているので、3歳を過ぎたら受けましょう。確実な免疫をつくるには、決められたとおりに受けることが大切ですが、万一間隔があいてしまった場合でも、その接種状況によりはじめからやり直しでは無く続けてできる事がありますので、かかりつけの医師に相談しましょう。

(3)日本脳炎ワクチンの副反応
副反応としては2日以内に37.5℃以上の発熱が接種を受けた人1.5%にみられています。注射局所の発赤(あかみ)、腫脹(はれ)は接種を受けた人100人中10人程度です。発疹も1.1%にみられ、圧痛もまれにみられます。


結核

(1)結核の病気の説明
わが国の結核はかなり減少しましたが、まだ3万 人を超える患者が毎年発生しており、大人から子どもへ感染することも少なくあ りません。また結核に対する抵抗力はお母さんからもらうことができませんので、生まれたばかりの赤ちゃんもかかる心配があります。乳幼児は結核に対する抵 抗力が弱いので、全身性の結核症にかかったり、結核性髄膜炎になることもあり、重い後遺症を残すことになります。ですからBCG接種を受けておきましょう。これで結核はおよそ1/4に減らせるのです。

(2)BCGワクチン(弱毒生ワクチン)
BCGは牛型結核菌を弱毒化した生ワクチンです。BCGの接種方法は管針法といってスタンプ方式で上腕の2カ所に押しつけて接種します。それ以外の場所に接種するとケロイドなどの副作用が出ることがありますので、絶対に避けなければなりません。接種したところは、日陰で乾燥させてください。10分程度で乾きます。

(3)BCGの副反応
接種後10日頃に接種局所に赤いポツポツができ一部に小さくうみをもったりします。この反応は接種後4週間頃に最も強くなりますが、その後はかさぶたができて接種後3ヵ月までにはなおり、小さなきずあとが残るだけになります。これは異常反応ではなく、BCGがついた証拠です。包帯をしたり、バンソウコウをはったりしないで、そのまま普通に清潔を保ってください。自然になおります。ただし、接種後3ヵ 月を過ぎても接種のあとがジクジクしているようなときは医師に診てもらってく ださい。副反応としては接種をした側のわきの下のリンパ節がまれに腫れることがあります。通常放置して様子をみてかまいませんが、ときにただれたり、大変 大きく腫れたり、まれに化膿して自然に破れてうみが出ることがあります。その場合には医師に診てもらってください。


インフルエンザ

(1)インフルエンザの病気の説明
インフルエンザウイルスが原因で起こる病気で、突然の発熱や全身の倦怠感などの症状が特徴です。伝染性が非常に強く、症状が激しく重症化しやすいなどから、普通のかぜとは区別すべき病気です。特に高齢者や乳幼児は重症化しやすいので注意が必要です。

(2)インフルエンザワクチン(不活化ワクチン)
インフルエンザのワクチンはウイルスを殺し(不活化)、精製したものです。ワクチンの基となるウイルス(ウイルス株)は、毎年WHO(世界保健機関)が発表する推奨株を基に、日本国内の専門家による会議にてその年の流行を予測・検討し、決定されています。

(3)インフルエンザワクチンの副反応  
接種から数日中に、注射した部分が赤くなったりはれたり、硬くなったり痛みが出ることがあります。また、発熱や頭痛、関節痛、下痢、倦怠感などの全身症状 がみられることもあります。通常2〜3日でこれらの症状は消えます。            また、ワクチン接種後の重大な副作用として、接種直後から概ね30分ぐらいまでの間に、アナフィラキシーショック(急性のアレルギー反応)、あるいは全身 の皮膚の変化や蕁麻疹、呼吸困難などが起こることがあります。

水痘

(1)水痘の病気の説明
水痘(みずぼうそう)とは水痘帯状疱疹ウイルスによる感染力が強い感染症の1つで、小さくて隆起した水疱やかさぶたなどから成る特徴的なかゆみのある発疹が生じます。水ぼうそうは非常に感染力の強い病気です。この病気は、水痘帯状疱疹ウイルスを含んだ飛沫 の空気感染により広がります。みずぼうそうの患者は症状が現れた直後が最も感染力が強いのですが、最後の水疱がかさぶたになるまで感染力はあります。水ぼうそうにかかったことのある人は免疫ができ、再度かかることはありません。しかし水痘帯状疱疹ウイルスは、水ぼうそうで最初に感染した後は体内に潜伏し、ときどき再活性化して帯状疱疹を起こします。

(2)水痘ワクチン(弱毒生ワクチン)
水痘ワクチンは水痘帯状疱疹ウイルスを弱毒化した生ワクチンです。日本で開発されたワクチンで安全性の高いワクチンです。
1歳以降に一回接種します。

(3)水痘ワクチンの副反応
接種1〜3週間後に発熱や発疹といった症状があらわれることもありますが、これは一時的なものですぐに治ります。

おたふくかぜ

(1)おたふくかぜの病気の説明
ムンプスウィルスの飛沫感染により起ります。潜伏期間は2〜3週間です。突然の発熱、両側あるいは片側の耳下腺のはれと痛みで始まります。2〜3日以内に対側の腫脹(しゅちょう)がみられ、顎下腺にも広がることがあります。ひとつの唾液腺のはれは3〜5日で引くことが多く、7〜10日で治ります。一度熱が下がった後にもう一度発熱して、腹痛、頭痛、精巣の腫れがみられた時は髄膜炎、精巣炎、などの合併症が起きた可能性があります。また、一万人に一人の割合で難聴の合併がみられます。

(2)おたふくかぜワクチン(弱毒生ワクチン)
おたふくかぜワクチンはムンプスウイルスを弱毒化した生ワクチンです。1歳以降に一回接種します。

(3)おたふくかぜワクチンの副反応
通常の反応として、敏感な子にはおたふく風邪と似た症状が出ることもあります。接種2〜3週間後に発熱や耳下腺の腫れ、咳、鼻水などの症状が出ることもありますが、これらは一時的なもの。ごくまれに無菌性髄膜炎を起こすことがあります。

ヒブ

(1)ヒブの病気の説明
ヒブ(ヘモフィルスインフルエンザ菌b型:Hib)と呼ばれる細菌による感染症で髄膜炎、肺炎、敗血症、喉頭蓋炎、蜂窩織炎、関節炎、骨髄炎などを引き起こし特に小さな子供がかかると重症になり、命に関わる病気になります。特に髄膜炎は治療を行ったとしても知能障害、てんかんなどの後遺症が残ります。

(2)ヒブワクチン(不活化ワクチン)
ヒブ(ヘモフィルスインフルエンザ菌b型:Hib)を殺し(不活化)、精製したものです。生後2か月から6か月までに初回接種をはじめれば合計4回、7か月から11か月は3回、1歳から4歳までは1回接種します。

(3)ヒブワクチンの副反応
接種から数日中に、注射した部分が赤くなったりはれたり、硬くなったり痛みが出ることがあります。また、発熱や下痢、倦怠感などの全身症状 がみられることもあります。通常2〜3日でこれらの症状は消えます。

肺炎球菌

(1)肺炎球菌の病気の説明
肺炎球菌と呼ばれる細菌による感染症で肺炎、敗血症、髄膜炎、菌血症、中耳炎などを引き起こします。小児では敗血症、髄膜炎、菌血症が問題となり時に致死的となり、重い後遺症を残す事があります。成人では多剤耐性菌が問題となり、高齢者が罹ると致死的になります。

(2)肺炎球菌ワクチン(不活化ワクチン)
肺炎球菌を殺し(不活化)、精製したものです。肺炎球菌は約90種類に分類されますがこの内小児用は7種類、成人用は23種類の菌の成分を含んでいます。成人用は1回、小児用は生後2か月から接種でき、標準的なスケジュールでは4週間隔で3回、生後12〜15か月齢に4回目を接種します。初回の接種月齢・年齢によって接種間隔・回数が異なります。

(3)肺炎球菌ワクチンの副反応
小児用では約10%に38度以上の熱が出ます。ほとんどは何もしないでも、1日で治まりますが、顔色や機嫌が悪い場合は受診してください。また成人用、小児用ともに接種したところが赤くなったり、しこりができることもあります。

HPV(子宮頸癌)

(1)HPV(ヒトパピローマウイルス)感染症の病気の説明
HPV(ヒトパピローマウイルス)は乳頭腫といういわゆるイボのウイルスで150種類以上あり、皮膚につくタイプと粘膜につくタイプがあります。
子宮頸癌の原因になるHPVは粘膜型で、性行為だけでなく皮膚の接触によるものを含めて女性の約80%は知らない間にかかっています。さ らに最近は性行為開始が低年齢化しており、その結果20〜40代の若い年齢での感染者数が急増しています。子宮頸癌は一年間に約 10,000〜15,000人の女性が発症し、毎年約3,500人が亡くなります。癌というと子宮体癌を含めて主に中高年になっ てからのことが多いのですが、子宮頸癌は20代前半の発症者もおり、30代までの若い患者が多いのが現実です。この癌の原因はHPVの中でも主に16 型と18型であり、主に性行為を通じて感染します。
HPVの6型と11型は、外陰部や膣に見られるやっかいなイボである尖圭(せんけい)コンジローマの主な原因となります。尖圭コンジローマは主に性行為を通じて発症し、患者数は男女あわせて4万人とも言われています。

(2)HPVワクチン(不活化ワクチン)
HPV(ヒトパピローマウイルス)を殺し(不活化)、精製したものです。サーバリックス(16 型と18型の成分が入ったもの)とガーダシル(16 型、18型、6型と11型の成分の入ったもの)の2種類のワクチンがあります。どちらも子宮頸癌に有効ですがガーダシルはそれに加えて尖圭コンジローマにも有効です。サーバリックスには独自の免疫賦活剤が入っており予防期間が長期に持続するといわれています。
どちらのワクチンもすでに感染したウイルスを排除したり、子宮頸癌やその他の病変を抑制したりする働きはありません。必ず子宮がん検診を受けてください。
性行為を通じて感染しますので10〜14歳の初交前に接種するのが推奨されています。ワクチンによりスケジュールが異なりますので注意してください。

(3)HPVワクチンの副反応
接種から数日中に、注射した部分が赤くなったりはれたり、硬くなったり痛みが出ることがあります。また、発熱や下痢、倦怠感などの全身症状 がみられることもあります。通常2〜3日でこれらの症状は消えます。
また、ワクチン接種後に血管迷走神経反射による失神が現れる事があるので、接種後30分は座って落ち着いた状態で様子を見てください。

ロタウイルス

(1)ロタウイルス感染症の病気の説明
ロタウイルスによって子どもの下痢やそれに伴う嘔吐がおこる感染症で「嘔吐下痢症」とも呼ばれます、その原因のほとんどがウイルスなので、「ウイルス性胃腸炎」とも呼ばれます。胃腸炎の原因になるウイルスはたくさんありますが、もっとも重症になりやすいのがロタウイルスによる胃腸炎です。ロタウイルス胃腸炎は水のような下痢が何 回も続き、それに嘔吐が伴います。体から水分と塩分が失われていき、いわゆる脱水症をおこします。ロタウイルスには多くの種類(型)があり、5歳頃までに少なくとも1回以上はかかりますが、その後も何回かかかることがあります。ただし2回以上かかると重症化する可能性は低くなります。感染力が強く、保育所などでもあっという間に流行します。手洗いなども大切ですが、完全に伝染を抑えることはできません。根本的な治療法がないために、ワクチンによる予防が重要です。
脱水症がひどくなると、点滴が必要になります。点滴をしても、重症で死亡することもあります。日本で毎年80万人が外来を受診し、8万人が入院、約10人が死亡します。脱水症だけでなく、繰り返すけいれんや脳炎(毎年約40人)や重い腎障害など重い合併症もおこします。

(2)ロタウイルスワクチン(弱毒生ワクチン)
ロタウイルスワクチンは弱毒化して培養して精製した液をシロップ状にした飲むワクチンを飲んで(経口)予防します。かかってしまうと根本的な治療法はありません。ワクチンで重症になるのを約 90%防ぐことができます。WHO(世界保健機関)は、ロタウイルスワクチンを子どもが接種する最重要ワクチンのひとつに位置付けていますので、今後は定 期接種になる可能性があります。世界では、ロタリックス(GSK社)とロタテック(MSD社)という2種類のワクチンが使われています。日本では、ロタリックスが2011年11月に、ロタテックが2012年7月に発売になりました。ワクチンの種類により接種スケジュールが異なりますので注意が必要です。いずれのワクチンも生後6週から接種(経口)ができ、接種できる期間が決められています。


(3)ロタウイルスワクチンの副反応
易刺激性、下痢、鼓腸、腹痛、皮膚炎などがみられますが発生割合は10%未満でした。海外の市販後調査で腸重積を起こすのではないかといわれていましたが生後60日以内の乳児では腸重積は起らなかったという報告があり生後3ヶ月までは腸重積は起りにくいと考えています。ロタリックスの日本国内の治験では腸重積の報告はありません。